この映画「GODZILLA-怪獣惑星-」はこれまでの特撮映画との直接的なつながりはない、アニメ作品として制作されたものです。
ゴジラファンというものは、あの独特の「特撮感」というものを楽しむ部分もあり、「アニメのゴジラ」と言われると少し釈然としないこともあるかもしれません。
しかしながら往年のゴジラファンとしてもいくつか気になるキーワードがちりばめられており、楽しむことができましたのでご紹介します!
【この記事は2018年6月16日に更新されました】
あらすじ
20世紀末、人類は突如出現した巨大生物「怪獣」の脅威にさらされる。
並みいる怪獣のなかでも特異的な「ゴジラ」の力は凄まじく、怪獣により地球が滅ばされるのを見過ごせなかった、2つの異星種族「エクシフ」と「ビルサルド」と同盟(地球連合)を結びゴジラに挑んだが、唯一の希望「メカゴジラ」も起動できず破壊され、勝ち目の無い戦いに人類は種全体の存続を図るため、一部の人間を他星に移住させる計画を立てることにした。
2048年、恒星間移民船の「アラトラム号」は選抜された一部の地球人、異星人種「エクシフ」と「ビルサルド」の人員を乗せ、惑星くじら座タウ星eを目指して旅立った。
そして20年後。
地球連合は地球から11.9光年離れたタウ星eに到着するが、そこは人類が生存するには適さない環境だった。
しかし、委員会(実質上の行政組織)は志願者を募り入植を強行してしまう。
入植に反対する主人公:ハルオは叛乱を起こすが拘束され、志願者たちも全て降下中の事故で死んでしまう結果となった。
今後の対応策を協議する中、船内ではハルオが立案した「対ゴジラ戦術」の情報が漏れ、地球への帰還を望む意見が大勢を占め、船長は地球への帰還を決定する。
アラトラム号は、亜空間航行で行きよりもはるかに短い時間で地球へ帰還するが、(ウラシマ効果で)地球では約1万年もの歳月が経過していた。
地球上を観測していたセンサーは「ゴジラの咆哮」を感知。
人類は長い年月を経ているのにも関わらず、生存しているゴジラに恐怖する。
委員会は帰還を諦めようとするが、エクシフの軍属神官メトフィエスの提案で「対ゴジラ戦術」が採用され、地球への部隊派遣が決定する。
こうして再び2万年越しの人類とゴジラとの戦いが幕を開ける。
まず、20世紀末~怪獣が暴れだしたとあるので、人類の科学レベルは現実世界と同じくらいと考えられます。
地球に人類が住めなくなり、移住を余儀なくされる…のはともかく、今の科学レベルではとてもではないですが、恒星間航行などというものは不可能です。
そこで登場した、2つの異星種族です。
一つは「エクシフ」、もう一つは「ビルサルド」です。
この2つの種族が高度な科学技術を提供したからこそ、地球を脱出し恒星間航行が可能になったという裏付けになっているのです。
実はエクシフ=X星人で、ビルサルド=ブラックホール第三惑星人なのだそうです。
冒頭の人類が地球から脱出することになった下りの部分で、メカゴジラを建造しゴジラ迎撃に向かわせようとしていたということ、ビルサルドが「ブラックホール」というキーワードを持っていたことからピンときました(笑)
ちなみに過去作ではメカゴジラを建造したのはブラックホール第三惑星人で、X星人の方はキングギドラを操っていた敵です。
このアニメのストーリーの中でも、「もしゴジラを倒せていたら」という仮定がありますが、どちらも最終的には地球の支配権を求めていただろうと言われており、本来は地球人の敵だったはずです。
ゴジラが暴れまわった結果地球に生物が住めなくなり、宇宙を流浪することになった人類が、地球を取り戻すためにゴジラと戦う。
このコンセプトってシドニアの騎士っぽいですよね。
初見では、絵のテイストや移民船の中の生活という事から、シドニアを見ているような気分になっていました。
ほぼ前半が宇宙漂流編ともいうべきストーリー展開になっていて、移民船での暮らし
と、それによる資源不足や閉塞感によるストレスにより、船員全体が疲弊しているという様子。
そして、希望だった惑星への移住失敗からこれからどうすれば良いんだという絶望…というような割りと静かな展開がずっと続くので、正直初見時はあまり頭に入ってきませんでした。
全体の尺として半分を過ぎた頃ゴジラの咆哮を感知し、地球連合の軍が地球に降下することになるのですが、ここでゴジラ細胞の影響を受けた生物の襲撃を受け、
そこから展開のテンポが速くなっていき、ようやくゴジラが登場します。
ただ、1万年経過して、文明の象徴たるビル群が崩壊しているためなのでしょうか、
ゴジラが小さく見える?
そして戦闘中のゴジラが咆哮しない?
などなど、いろいろ疑問が生じます。
こういった、ゴジラファンとしてはちょっと不満を抱えつつ最後まで見ていると、
これぞゴジラといえるカタルシス(圧倒的破壊力、勝ち目が無さそうというまさに破壊神の姿)が見られて満足しました。
以下にご紹介するのはこの映画の前日談です。
「なんだかBLAME!やシドニアの騎士ぽいな」
と思ったのですが、それもそのはず、製作会社がこれらのアニメと同じ会社です。
この映画を作成した会社はポリゴン・ピクチュアズといいます。
私を含めCGにちょっとでも関わったことのある人なら知らない人はほぼいない会社と言っても良いでしょう。
監督は共同監督で、静野孔文さん(シドニアの騎士)、瀬下寛之さん(FinalFantasy、亜人)を手がけられた方々なのでテイストが似るのもしかるべきでしょうか。
ストーリー原案・脚本は虚淵玄さんです。
魔法少女まどか☆マギカ、仮面ライダー鎧武などで有名な方ですね。
この方の描かれるキャラクターは幸せな終わりを迎えられない事が多いですが、まあそもそも人類が滅びかけているので、普段とは逆の展開になるのでしょうか。
どのような手法で作られているかといいますと、まず「アニメ」ジャンルではありますが、手描きのアニメではありません。
キャラクター、メカ、ゴジラや怪獣たちは3DCGによってデザインされています。
こうしてコンピューターの中での「立体」として作られたものを、そのまま立体として認識されるような描き方をせず、いわゆるアニメ的な表現に落とし込みます。
色面分割というものですが、陰影が微妙なグラデーションで行われるものではなく、明るいか中間くらいの明るさ部分のベース色+影色という形で表現されるアニメの記号的な描き方ですね。
※こういう描画方法を、「セルシェーディング」または「トゥーンシェーディング」と言います。
反面、ゴジラや怪獣、背景については微妙なグラデーションが採用されていて、キャラと比較して巨大感を表現しているように見えます。
ただし、やはりアニメ作品なので、リアルなゴジラ、ではなくてリアルとアンリアルの間くらいの表現ですね。
3DCGというと、ハリウッド映画に見られるようなリアルなものを想像されるかと思いますが、このあたり日本での3DCGは独特な進化を遂げていまして、「実写と見紛うリアルな映像」というよりは、「アニメ映画作品として、日本文化に馴染みやすいもの」を目指しています。
前述の絵柄の表現以外では、「動き」という部門も実写映画や、ハリウッド、ディズニーやピクサーのCGアニメーションと違います。
一般的に映画は1秒あたり24フレームで映像を投影していますが、日本のアニメの場合この24フレーム=フルフレームを使うことは少なく、速い動きでも秒12フレーム、緩やかな場面では秒8フレームということが多く、リミテッド・アニメーションという手法です。
ゴジラも少なくとも人間などのキャラクターについては、リミテッド・アニメーションが使用されているように感じられます。
思うに、「日本のアニメ」を好む人々は、フルフレームのようななめらかな動きを求めていないので、「アンリアルなキャラクターがなめらかに動く」とかなり違和感を感じるようです。
そのため、「日本のアニメ作品」として制作された「GODZILLA-怪獣惑星-」はそのような意図で制作されていると思われます。
したがってこれだけで判断してはいけない部分も大きいですが…、
でもこれだけはやっぱり取り入れてほしいなあ、というのは、BGMです。
絵柄はシドニアっぽくってもいいのですが、
音楽さえ伊福部昭さんのゴジラのテーマであれば、それでもう「ゴジラ」なのです。
シン・ゴジラも監督が庵野秀行さんだったため、かなりBGMを「エヴァンゲリオン」から引っ張ってきていましたが、それでもゴジラのテーマを使っていましたよね。
これがゴジラの様式美ですから!
あとはメカゴジラ大好きなので、実は地中にメカゴジラが埋まってて、次作では活躍するとかだといいなあ。(←公開されましたが…絶句)
ということで、今現在Netflixであれば標準の契約だけでこの作品を見ることができますし、話題の「デビルマン・クライベイビー」も見ることができます。
第二章「GODZILLA 決戦機動増殖都市」は2018年5月に公開され、完結編の第三章「GODZILLA 決戦機動増殖都市」は2018年11月公開予定です。
第二章、そして第三章を見るために、第一章を予習してはいかがでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
ゴジラうんちく
超SFアニメ作品として作られたGODZILLA-怪獣惑星-ですが、いくつかゴジラファンが見ているとニヤリとする瞬間があります。まず、20世紀末~怪獣が暴れだしたとあるので、人類の科学レベルは現実世界と同じくらいと考えられます。
地球に人類が住めなくなり、移住を余儀なくされる…のはともかく、今の科学レベルではとてもではないですが、恒星間航行などというものは不可能です。
そこで登場した、2つの異星種族です。
一つは「エクシフ」、もう一つは「ビルサルド」です。
この2つの種族が高度な科学技術を提供したからこそ、地球を脱出し恒星間航行が可能になったという裏付けになっているのです。
実はエクシフ=X星人で、ビルサルド=ブラックホール第三惑星人なのだそうです。
冒頭の人類が地球から脱出することになった下りの部分で、メカゴジラを建造しゴジラ迎撃に向かわせようとしていたということ、ビルサルドが「ブラックホール」というキーワードを持っていたことからピンときました(笑)
ちなみに過去作ではメカゴジラを建造したのはブラックホール第三惑星人で、X星人の方はキングギドラを操っていた敵です。
このアニメのストーリーの中でも、「もしゴジラを倒せていたら」という仮定がありますが、どちらも最終的には地球の支配権を求めていただろうと言われており、本来は地球人の敵だったはずです。
ファーストインプレッション
予備知識がなく、また、もしゴジラというタイトルを隠したと仮定すると「ゴジラ作品」に見えにくい印象があります。ゴジラが暴れまわった結果地球に生物が住めなくなり、宇宙を流浪することになった人類が、地球を取り戻すためにゴジラと戦う。
このコンセプトってシドニアの騎士っぽいですよね。
初見では、絵のテイストや移民船の中の生活という事から、シドニアを見ているような気分になっていました。
ほぼ前半が宇宙漂流編ともいうべきストーリー展開になっていて、移民船での暮らし
と、それによる資源不足や閉塞感によるストレスにより、船員全体が疲弊しているという様子。
そして、希望だった惑星への移住失敗からこれからどうすれば良いんだという絶望…というような割りと静かな展開がずっと続くので、正直初見時はあまり頭に入ってきませんでした。
全体の尺として半分を過ぎた頃ゴジラの咆哮を感知し、地球連合の軍が地球に降下することになるのですが、ここでゴジラ細胞の影響を受けた生物の襲撃を受け、
そこから展開のテンポが速くなっていき、ようやくゴジラが登場します。
ただ、1万年経過して、文明の象徴たるビル群が崩壊しているためなのでしょうか、
ゴジラが小さく見える?
そして戦闘中のゴジラが咆哮しない?
などなど、いろいろ疑問が生じます。
こういった、ゴジラファンとしてはちょっと不満を抱えつつ最後まで見ていると、
これぞゴジラといえるカタルシス(圧倒的破壊力、勝ち目が無さそうというまさに破壊神の姿)が見られて満足しました。
以下にご紹介するのはこの映画の前日談です。
ゴジラ―かつて万物の霊長を僭称していた我々は、あの恐るべき怪獣と出会い、戦い、敗れて地球を追われた。当時最前線の兵士だった者、彼らを指揮する将官あるいは政治家、科学者だった者、あるいは一般市民、幼い子供だった者。これはそんな一人一人が語った、抗戦と敗北の記録である。果てしない絶望の日々を、人々はいかに生き抜いたのか?―謎に満ちたアニメ映画版GODZILLAの前史を読み解く唯一無二の小説版!
(紹介文はAmazonより引用)
3DCGによってデザインされたゴジラ世界
まず初見で見た瞬間は前述の通り、「なんだかBLAME!やシドニアの騎士ぽいな」
と思ったのですが、それもそのはず、製作会社がこれらのアニメと同じ会社です。
この映画を作成した会社はポリゴン・ピクチュアズといいます。
私を含めCGにちょっとでも関わったことのある人なら知らない人はほぼいない会社と言っても良いでしょう。
監督は共同監督で、静野孔文さん(シドニアの騎士)、瀬下寛之さん(FinalFantasy、亜人)を手がけられた方々なのでテイストが似るのもしかるべきでしょうか。
ストーリー原案・脚本は虚淵玄さんです。
魔法少女まどか☆マギカ、仮面ライダー鎧武などで有名な方ですね。
この方の描かれるキャラクターは幸せな終わりを迎えられない事が多いですが、まあそもそも人類が滅びかけているので、普段とは逆の展開になるのでしょうか。
どのような手法で作られているかといいますと、まず「アニメ」ジャンルではありますが、手描きのアニメではありません。
キャラクター、メカ、ゴジラや怪獣たちは3DCGによってデザインされています。
こうしてコンピューターの中での「立体」として作られたものを、そのまま立体として認識されるような描き方をせず、いわゆるアニメ的な表現に落とし込みます。
色面分割というものですが、陰影が微妙なグラデーションで行われるものではなく、明るいか中間くらいの明るさ部分のベース色+影色という形で表現されるアニメの記号的な描き方ですね。
※こういう描画方法を、「セルシェーディング」または「トゥーンシェーディング」と言います。
反面、ゴジラや怪獣、背景については微妙なグラデーションが採用されていて、キャラと比較して巨大感を表現しているように見えます。
ただし、やはりアニメ作品なので、リアルなゴジラ、ではなくてリアルとアンリアルの間くらいの表現ですね。
3DCGというと、ハリウッド映画に見られるようなリアルなものを想像されるかと思いますが、このあたり日本での3DCGは独特な進化を遂げていまして、「実写と見紛うリアルな映像」というよりは、「アニメ映画作品として、日本文化に馴染みやすいもの」を目指しています。
前述の絵柄の表現以外では、「動き」という部門も実写映画や、ハリウッド、ディズニーやピクサーのCGアニメーションと違います。
一般的に映画は1秒あたり24フレームで映像を投影していますが、日本のアニメの場合この24フレーム=フルフレームを使うことは少なく、速い動きでも秒12フレーム、緩やかな場面では秒8フレームということが多く、リミテッド・アニメーションという手法です。
ゴジラも少なくとも人間などのキャラクターについては、リミテッド・アニメーションが使用されているように感じられます。
思うに、「日本のアニメ」を好む人々は、フルフレームのようななめらかな動きを求めていないので、「アンリアルなキャラクターがなめらかに動く」とかなり違和感を感じるようです。
そのため、「日本のアニメ作品」として制作された「GODZILLA-怪獣惑星-」はそのような意図で制作されていると思われます。
最後に
本作は、アニメシリーズ「GODZILLA」三部作の第一作として製作されました。したがってこれだけで判断してはいけない部分も大きいですが…、
でもこれだけはやっぱり取り入れてほしいなあ、というのは、BGMです。
絵柄はシドニアっぽくってもいいのですが、
音楽さえ伊福部昭さんのゴジラのテーマであれば、それでもう「ゴジラ」なのです。
シン・ゴジラも監督が庵野秀行さんだったため、かなりBGMを「エヴァンゲリオン」から引っ張ってきていましたが、それでもゴジラのテーマを使っていましたよね。
これがゴジラの様式美ですから!
ということで、今現在Netflixであれば標準の契約だけでこの作品を見ることができますし、話題の「デビルマン・クライベイビー」も見ることができます。
第二章「GODZILLA 決戦機動増殖都市」は2018年5月に公開され、完結編の第三章「GODZILLA 決戦機動増殖都市」は2018年11月公開予定です。
第二章、そして第三章を見るために、第一章を予習してはいかがでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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