オリンピック開会式、見てよかったわー
あれだけ波乱が続いたら逆に関心でてくるでしょう…。
2021年7月23日
世界的な新型コロナ感染症の広がりのため延期となってしまった『東京オリンピック2020』が、1年延期の後にようやく開催されました。
思えば…
オリンピックエンブレム問題、新国立競技場の建築士の変更に始まり、
東京オリンピック会長の森元総理、総合演出の佐々木氏の失言などによる辞任。
この後も土壇場になっての開会式の楽曲担当の小山田氏の過去のいじめ問題による辞任、総合演出の小林氏のこれまた過去のコント問題による解任など…。
そして、4度目の緊急事態宣言下での開催。
そのため無観客となり異例のオリンピックとなってしまいました。
でも…
この追い込まれた状況で、クリエイターたちはどう仕上げていくのか、
そして、パフォーマンスもデザインの塊のようなモノですので、気になって開会式を見ることにしたのです。
デザイン講師ブロガーのセッジです❗
本当にどうなるのか…という状態だった東京オリンピック開会式。
先輩的には楽しめたようですが、どうだったんでしょうネ❓
オリンピックの由来
私は星座絵を描いているコトもあり、ギリシャ神話にとても興味があります。
オリンピックは元々は古代ギリシャのオリンピアで生まれたというコト、あなたはご存知ですか?
紀元前8世紀頃、古代ギリシャは一つの国ではなく、都市国家の集まりでした。
都市国家間は争いが絶えず、特にオリンピアの領有権で争っていたのが隣り合わせの国であるエリスとピザでした。
長きに渡る戦争、そしてさらには感染症(❗)まで流行してしまい…
行き詰まってしまったエリスの王・イピトスは、デルフィにある神殿で祈りを捧げます。
すると…
「争いをやめ、かつて行っていたオリンピア祭を復活させよ」
と神託を受けます。
それに従って隣国ピザと休戦し、紀元前776年にオリンピアで行われたのが古代オリンピックの始まりとされています。
古代オリンピックは主神ゼウスに捧げる聖なる祭典のため、血を流すことは禁じられていました。
開催期間の5日間を含め前後3ヶ月間はエケケイリア=聖なる休戦と呼び、ギリシャ全土に渡って争い事が禁止されました。
イピトスが復活させたオリンピア祭は神話に由来します。
その1つは、
トロイア戦争で亡くなった親友パトロクロスをいたみ、アキレウスが開催した。
もう1つは、
約束を破ったアウゲイアース王を倒したヘラクレスがゼウス神殿を建設し、ここで4年に1度競技会を開催した。
など諸説あります。
神話由来であるというのは、エリス市民が権威付けのために創作したのではないかとも言われているようです。
なんと、感染症の流行も関係してたんですネ❗
東京上空に浮かぶオリンピックシンボル
開会式当日は祭日、そして緊急事態宣言下というコトもあり、外出するつもりは無かったので12時をまっていました。
そう、ブルーインパルスです❗
2020年6月にも、医療従事者への感謝の意を示した飛行が行われました。
その時はうまく撮影できず、
今回こそは!
…と思っていたのですが、眩しい中での液晶ファインダーでは確認しづらく、オリンピックシンボル全体をフレームの中に収められませんでした。
古いGX1というパナソニックのデジタル一眼カメラを使っているのですが、
いつもこういう時は「ライブビューファインダを買っておけば良かった」と後悔します…。
それでも色と輪のカタチは結構確認できるのではないでしょうか?
この後すぐスモークは拡散してしまうのですが、
これは上空の風の影響や、色材が地上に落ちてきて洗濯物を汚さないよう、拡散しやすいようにしてあるそうです。
やや陰のあった開会式序盤
おそらくパンデミックが無かったら総合演出は野村萬斎氏であったコトから、リオでの招致パフォーマンスの続き的な演出だったのでしょうが、
会期延長とともに野村氏のチームは解散。
その後佐々木氏の就任とともに大幅な路線変更があったと言われています。
運動が苦手でコンプレックスがある私は、アスリートたちの活躍はすごいと思うモノの人が競技をする姿を見てもあまり興味を持ちません。
しかし、前述の通り波乱がありすぎたため、逆に開会式への関心は強くなっていたのですね。
パンデミック、そして緊急事態宣言下での無観客での開催。
規模を縮小してのパフォーマンスもありましたし、この1年のパンデミックについて語るコトも避けられず、出だしはかなり陰のあるモノとなっていました。
そこから真矢みきさん率いる『木遣り唄』のダンスパフォーマンスが始まります。
これは、江戸時代、火消しと大工たちなどが、複数人で作業する時に士気を高めるために歌っていた作業歌が起源と言われています。
賑やかなパフォーマンスではあるのですが、
無観客かつ、広い競技場の中で狭い範囲での演技のためか…
あくまでも私の感覚ですが、少し寂しい印象に繋がってしまいました。
しかしそのラストで現れる木製オリンピックシンボルは見事でした。
これは1964年の東京オリンピック当時、各国から持ち寄られた種から育てられた間伐材から作られています。
57年の時を超えて、2つの東京オリンピックが繋がりを象徴していて、
日本全国から集められた大量の間伐材が使用されている新国立競技場の中央に配置するコトで「木の文化」を印象づけるオリンピックの意味があるそうです。
選手入場曲が全てアノ曲だった!
木遣り唄のパフォーマンスが終わり、ここから映像による…
試合前の選手になぞらえたオーケストラのチューニングが始まります。
そのチューニングの折々になんとなくアノ曲を思わせる音色が…。
まさか…?まさか…?!
と思っていると、ついに選手入場となり…
私自身初めてプレイしたRPGであり、そして日本中のゲームファンが熱狂したあのテーマ曲が流れます。
そう、ドラゴンクエスト「ロトのテーマ」です!
つづいてファイナルファンタジー「ファンファーレ」(レベルアップやボスを倒した時の曲)、
モンスターハンター「英雄の証」など古いゲームファンから最近のゲームファンまで馴染みのある曲が流れていきます。
演出家の2度に渡る変更で、リオでの演出の日本の代表的なコンテンツ、マンガやアニメ、ゲームといった要素は無くなってしまったかも…と考えていたので…
正直、鳥肌が立つくらい心が動かされました。
また、アスリートを誘導するプラカードベアラーの服装も象徴的でした。
スクリーントーンをイメージさせるモノだったり、プラカードが集中線とフキダシをあしらったモノであり、ここにもマンガ的記号が盛り込まれていました。
※少しフキダシには違和感がありましたが😅
そして選手入場の〆にはまた「ロトのテーマ」で終わるという粋なはからいがありました。
オリンピックのピクトグラム
まずはこちらをご覧ください…。
SNS界隈ではすでに『ピクトさん』の愛称がついている、ピクトグラムを紹介するパントマイムです😊
このYoutubeではピクトグラム紹介の後半のパントマイムパフォーマンスしかありませんが、配信されていない前半部分も実は重要でした。
現在のオリンピックでは当たり前に使用されているピクトグラムですが、これも過去の東京オリンピックと関係が深いそうです。
―と、その前に、ピクトグラムとは何かご存知ですか?
ピクトグラムとは「絵文字」「絵単語」と言った意味になります。
もう少し詳しく言うと「ひと目見ただけで、言語の違いを超えて意味を伝達できる、絵を文字化したモノ」といったところです。
文字が絵から生まれたコトから考えると逆進化したとも言えますが、様々な国の人々が行き来するようになった現在では、とても有効な手段です。
われわれ日本に住む人にとって、もっとも身近で良く知っているピクトグラムと言えば?
小谷松敏文氏・太田幸夫氏らによってデザインされた「非常口のマーク」です。
これは現在日本だけでなく、国際的な規格になっています。
オリンピックのように多数の国・多数の言語を使う人々が集まる場では、このピクトグラムが持つ「伝える力」がとても重要なのです。
実はこのピクトグラム。
1964年の東京オリンピックで初めて使われるようになったとのコトで、それもあってここでも過去と現在が繋がり、CGで動くピクトグラムが作成されています。
ただ、それだけでは認知されませんので、パントマイムはそれを楽しく紹介する目的があったのです。
空中に浮かぶエンブレムと地球
楽しくわかりやすいピクトグラムパントマイムが終わった後は、
様々な年齢・人種・性別のパフォーマーによるパフォーマンスが始まります。(このオリンピックのテーマの1つに「多様性」があります)
さまざまな色の箱を動かしていく、という主旨のモノです。
色の輪を作ったり、転がしたり、スライドしていくのですが、よく見ると三種類のカタチがあります。
それをさらに動かしていくと…?
そう、市松模様の東京オリンピックエンブレムになるのです❗
トラブルが起こり、変更を余儀なくされた東京オリンピックエンブレムですが、最終的にはこの市松模様が美しい円を描いたエンブレムになりましたね。
このエンブレムには、それぞれの四角形を動かすことでパラリンピックのエンブレムになる、つまり両方とも同数・同形の四角形で出来ている特徴があります。
この特徴を利用すると、こういうパフォーマンスもできるコトになります。
そして、エンブレムが完成し、全てのパフォーマーたちが空に手をかざすと…
そこには空中に浮かぶ巨大なエンブレムが…❗
あまりにも精密なため、私にはアレがどうやって表示されているのかすぐには理解できませんでした。
CGを合成した?(つまり本当は存在していない?)
あるいはレーザー光線?
などと想像していると、空中に浮かぶエンブレムが全てドローンによるモノだと判ります。
その数なんと、1800機。
これを精密に動かしてエンブレムのカタチにしているのも驚きですが…
さらにそれが変形して地球になります。
このドローンによるエンブレムと地球は息を呑むほど美しく…
競技場周辺には多くの人たちが集まっていたようですが、思わず見とれて無言になってしまったとか。
東京名所紹介と聖火点火
ドローンによる美しい地球とその精密な操作に目を奪われた後に続くのは、
いたずらをする劇団ひとり氏と、それをたしなめる上司(?)の荒川静香氏による東京名所紹介の寸劇です。
その最後に歌舞伎座の紹介になると、新国立競技場の聖火台の前にカメラは戻って、
歌舞伎の市川海老蔵氏と、ピアノの上原ひろみ氏のコラボレーションとなりました。
普段歌舞伎を見慣れていないため、歌舞伎の見得の意味が判らなかったのですが、
詳しい人によれば、海老蔵氏の屋号「成田屋」にのみ伝承される見得「にらみ」。
これには「邪気を祓う(はらう)」という意味があり、そのにらむ姿を見た人は一年は風邪を引かないと言われたそうです。
まさに新型コロナに人々が苦しんでいる今、人々に向けて放たれた海老蔵氏の邪気祓いという意味があったのですね。
歌舞伎とピアノのコラボに目が行きがちですが、伝統の中にある意味=デザインについても注目しておきたいところです。
また、ここで海老蔵氏が聖火台の前で舞ったことにより、次の演目「聖火点灯」に繋がっていきます。
ここでは、吉田沙保里氏と野村忠宏氏から始まり、
長嶋茂雄氏とそれを支える王貞治氏と松井秀喜氏、医療従事者、パラリンピックアスリートの土田和歌子氏、そして東日本大震災被災地の子どもたちを経て、最終ランナーの大坂なおみ氏に受け継がれて点火されます。
聖火台のオブジェは、太陽と富士山をモチーフとしているそうです。
炎の燃料は次世代エネルギーである水素が利用されています。
この水素燃料は福島県で太陽光発電により水を電気分解して得られたものとのコトです。
太陽と言えばエネルギーや生命力そのものと言えますよね。
当初の総合演出だった野村萬斎氏の「太陽の下に皆が集い、皆が平等の存在であり、皆がエネルギーを得る」というコンセプトに基づいてデザインされています。
またそれを支える富士山ですが、
この名前の由来は「竹取物語」から来ているという説があります。
月に帰るかぐや姫から「不老不死の薬」を渡された帝が、かぐや姫を失った悲しみから希望を無くしてしまい、日本で一番高い山の山頂でこの薬を焼いたとされ、そこから「不死山」さらに時を経て「富士山」になった、というのです。
太陽も富士山も日本を象徴するモノですが、それ以外にも太陽(生命力)と不死(死を遠ざける)という意味も見いだせそうです。
これも今の状況的に対する思想があるのかもしれません。
願いってそういうモノですしネ
オリンピックとデザイン
ということで、
今回は私=セッジの主観ではありますが、東京オリンピック2020開会式からデザインとその意図について考察してみました。
開催土壇場まで相次ぐトラブルが続いたという意味でも異例。
その最大のモノはもちろん新型コロナ感染症ですが、それによる無観客での開催も異例。
これによってどうなるのか、とても心配していました。
こういった悪い条件が続いた中で、それでもできる限りカタチにしたクリエイターたちに敬意を表します。
そしてこの状況下にも関わらず集まってくれたアスリートの皆さん、日本に来てくれてありがとうございます❗
オリンピックといえばスポーツの祭典ですが、
世界中の人が集まり注目されるイベントである以上は、全てがデザインの塊であると言えます。
もちろん、楽しむだけでも良いのですが、あなたもその中に込められた意図を考えてみませんか?
そこには必ず作り手たちの想いや…デザインの思考が宿っていますので!
何しろこれ、天皇陛下の御前だからね。昔はゲームやってるだけで白い目で見られたのに、
今や日本を代表するコンテンツだから❗
でも、おそらく一生の中でそう見れるものでもないので…
当ブログではこういったデザイン情報について発信していますので、良かったら他の記事もご覧ください❗
ミライトワとソメイティはどうしたんでしょ?
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